ミデアタイプの大型輸送機の窓から俺は霧の空を眺めていた
オデッサ作戦で、俺はTMM専科〜

(タクティカル・モビル・マニュピレータ、MS登場以前の次期宇宙用機動兵器開発とそのパイロット育成の
スペシャルエリートコース、のちにモビルスーツ教導団と改名MSパイロット養成機関となる。)

〜の戦友と共に新兵器モビルスーツの実働試験を終えて
MS小隊の隊長の辞令を貰い、部下と合流するために、彼らの乗るMSとともに
俺は機上の人になっていた。

「会ってテストしますから大丈夫ですよ。」
「そうか、解った。戦果を期待している、コーヘイ・オリハラ少尉。」

失敗だった、カッコつけないで素直にメンバーのファイルを貰っておけば良かった・・・
暇でしょうがない。
地中海のバレアレス基地において小隊のメンバーと合流しアフリカ戦線に向かう。
アフリカで最初に配備されるMS隊だからなのか、機内で俺はVIPみたいな扱いを受け
何もする事が無かった。

「あはは〜っ少尉さん、もうすぐ到着ですよ〜」
「あと3世紀寝かせてくれ〜」
「はぇ〜、300年も生きてられませんよ〜」

パネルから聞こえるのは他の部隊に配属になる予定のウェーブのパイロットだ、
彼女の笑顔を見ると故郷で士官学校に入る為に街をでる俺を見送ってくれた少女達の顔を思い出す・・・
ジオンの爆撃でその街はもう無いと話に聞いた・・・

「どうしました?〜」
「あぁ、今行く。」

01



















俺は到着の報告をする為に担当事務官の所に行こうと廊下の角を曲がった・・・
何かが俺の背中にしがみつき・・・

ごいん!!!!

俺は唐突に目の前が真っ暗になり、ものすごい衝撃を顔に受けた。

「ううっ、いたいよ〜眼がちかちかする・・・」

?????なんか懐かしい衝撃と声・・・・
そこには眼に涙を浮かべて額に手を当てている漆黒の髪の女性がいた

「ひどいよ〜・・・・?????」
「あ・・・えっとごめ・・・ひょっとして・・・ミサキ先輩?」
「あ〜!コーヘイ君!!」

と、いうことは・・・

 ぶん!!

体を振ったが離れない

 ぶん!!!

さらに強く振っても離れない
おそらくこの後ろにしがみついているのは・・・・

「やっぱり・・・ミオ、・・・」
「・・・・・」

しゃべれないミオは俺にしがみついているから返事が出来ない・・・
戦火に巻き込まれ、もう会えないと思っていた人が目の前にいる。
うれしさに俺の目から涙がこぼれたが気にしなかった

『めがまわったの』

そう書きつつ、ミオはぽてっ、と背中から転げた




「そうか・・・あのあとみんな志願したのか・・・」

食堂で軽く?食事を取りながら3人は談笑している

「うん、でもみんなバラバラだから、輸送部隊でミオちゃんと一緒だったのが奇跡だよ〜、」
「って、しゃべれないのによく審査に通ったものだ・・・」
「本当なら書類審査で落ちてるはずだと思うよ、でも・・・」
『面接がミナセ准将さんだったの。』
「なるほど、一秒で了承されたのか。」
どうしてわかったの?』
「俺もそうだったからな。」

おれは到着の挨拶を済ますと二人と食堂で早い昼食をとっていて
士官学校の面接時、専科の希望を聴かれ、答えたコーヘイに一秒で返事をした不思議な女性士官を
思い出していた。

「謎な人だったな・・・」
「そうなんだ。」

すでにミサキの横にはカツカレーの皿が5枚重なってる

「・・・しかし・・・相変わらずだね・・・でもそれでこそミサキ先輩だ。」
『補給がいつも足りなくなるの。』
「・・・なんか酷い事言われた気がするよ・・・」
「気のせいだ。」
「う〜」
「そういえば二人は今はこの基地の所属なのか?」
「違うよっ、今度新編される部隊に配属されたんだよ〜、ミオちゃんも一緒に。」
『そうなの』
「へぇ、なんて部隊だい?」
「え〜とね、第1機甲師団機械化機動中隊第2小隊だよ。」
「えっ?」

それって俺の小隊じゃないか・・・


「コーヘイ君は?」
「俺は・・・まだ聴いて無い・・・」
「そうなんだ〜」

内緒にしていたほうが面白そうだ、その時俺はそう思ったのだったが・・・

「コーヘイ・オリハラ少尉入ります」

呼ばれて入った部屋には俺の叔母、ユキコ・コサカ中佐がいた。

「ユ、ユキコさん、何故ここに・・・」
「コーヘイ、公私をわきまえなさい、ま、ここには二人だけですからいいですが。」
「すいません、コサカ中佐、で、貴官に何の用でありましょうか?」
「普通でいいと言ったでしょ・・・まったく・・・」
「久しぶりです、叔母さん。」
「・・・」
「・・・」
「今度新編される機動MS中隊隊長に私が任命されました。ただいまよりコーヘイは私の部下、となりますからね。」
「ユキコ叔母さんが上司なら賛成こそすれ文句などないですよ。」
「ありがとう、あなたの部下を呼んでありますから、紹介しましょう。」
「二人は知ってますけどね。」
「あら、ファイルを受け取らなかったと聴いていたのですが。」
「先ほど会いましたよ。」
「では、コーヘイが隊長というのは・・・」
「言ってません、驚かしたいから。」
「驚くのはどっちかしらね。」

クスリと含み笑いをするユキコ。

「へ?」
「あ、来たみたいね。」

ノックの音と声が聞こえる

「ミサキ・カワナ曹長以下、入ります。」

そこに入ってきた面々は十二分に俺を驚かせた。
知ってるもなにもそこには街で俺を見送ってくれた少女達、いや今は立派な女性と言うべきか、
とにかく彼女達がいた。

「コーヘイ!!!!」
「見事なカウンターだ・・・」

俺は嬉しそうな声でつぶやいた

「副隊長を拝命したユキミ・ミヤマ曹長です。」
「ミサキ・カワナ曹長、ソナー手担当だよ〜」
「・・・アカネ・サトムラ軍曹・・・MSパイロットです。」
「ミズカ・ナガモリ、軍曹だよ、ホバートラック操縦担当だもん、」
「ルミ・ナナセ軍曹、MSパイロットよ。」
「シイコ・ユヅキ軍曹、MSパイロットだからよろしく〜」
『ミオ・コウヅキ上等兵なの。』

ユキコさんが号令をかけると彼女達は一人一人眼に涙をためつつ
きちんと敬礼してゆく

「俺が第二小隊隊長になったコーヘイ・オリハラ少尉だ、しっかり着いてこいよ。」

ぴしっと陸軍式敬礼で俺は彼女達に返礼した

「と、形式的にはこんなもんでいいでしょ?ユキコさん。」
「そうね、早速明日の朝0500出発だから、休んでおいてね。以上解散!」

5時か・・・起きれるかね?





結局起こしに来た全員が誰が起こすかを目の前で大騒ぎしたものだから遅刻は免れた



「クルップラーだ、第5地区に敵影無し。」
「了解、そのまま偵察を続行せよ・・・」

アラメインに進軍した俺達はそのまま部隊を展開し、砂漠のオアシスにキャンプを張り、
随行してきたヘリ部隊の偵察による情報を待つ。

「こちらスミイだ、第4地区に野営の跡を発見、前回確認されていないから近場にジオンMSが潜んでいるぞ。」
「了解、」
「師団長、どうします?」
「第2小隊を向かわせろ。」

師団本部でそういった事が起こっている事も知らずに、俺達はメンバー全員でモビルスーツの整備をしていた。




「こんな、地道な掃除なんて・・・乙女のなせる技よね〜」
「ふぅ・・・油まみれだよ、終わったらシャワー浴びるんだもん・・・」
「だ〜〜〜〜〜試作機なんて嫌いだ〜〜〜〜」
「・・・・・コーヘイ、手を進めて下さい。」

いくら、防塵仕様にしてあっても、MSの関節部には砂が入り込む、
特にコーヘイの機体は実験機という事もあって、機構が複雑故、その作業は難航していた。
砂の除去作業に一息ついた所に出撃の指令がコーヘイ達に送られて来た。

「みんな出撃だ、」

こうして俺達は激戦のまっただ中に突入する事になった。





2/23暫定