10・きらめく宇宙

ソーラ・レイの一撃はデギン公王とレビル将軍を巻き込み、第一連合艦隊を襲い、
無傷の艦はほぼ無い状況に陥らせた
ギレンがア・バオア・クーで演説をしている頃、
コウ達の居るヘスペロスはレビル艦隊とは正反対の第三防衛ライン上に集結しつつあり。
そこで遭遇戦による損傷の修理に工作艦を接舷させていた。

「サツキ!状況は?」」

もう何度目だろうか、アカギは通信オペレータのサツキに聞き直す
作戦の司令部が消失したことに、連邦軍艦隊は混乱を極め、
レビル将軍率いていた第一連合艦隊のみならず
別働隊である、第二連合艦隊残存艦隊、第一機動艦隊をも歩調を合わせる為に奔走していた

「旗艦をルザルに移してホワイトベースを基点に再集結中です、」

だいぶオペレーションに慣れたのか、ハッキリした言い方でサツキは答える
マゼラン級とはいえ、ルザルには、フェーベ(レビル将軍の乗艦、マゼラン級戦艦)
ほどの旗艦設備は整っていない、アカギはこの戦いがいくつもの司令系統による混乱を予想した

第一機動艦隊の行動は?」
「予定通りに開始せよ、です。」

アカギの顔がしかめる、
予定通りと言うことは、本隊の再集結を待たずに攻撃を開始しろと言うことだ、
当然、各個撃破される事があり得る・・・


「艦長。」

第一機動艦隊旗艦に出向いていたレイがブリッジの戻ってきてアカギに声を掛ける

「我が艦は、応急修理が済み次第、戦列に復帰、MSは直援を除いて先行して出撃。」
「了解、」

アカギは
MSデッキのコウをモニターで呼び出す
整備人員の被害が大きいヘスペロスでは、ソフトウェアなどの調整はパイロットが
自分から行っていたのだ、
作業着姿のコウがモニターに写る。

「状況は今そちらに転送した、」
「了解、艦長。」

主力たるMSも、そのパイロットも満身創痍である、
編成時から比べて、パイロットの数も大きく減り
573戦隊では、19人となる。

「ちょっとみんな集まってくれ。」

コウは左舷デッキにいるメンバーを集めた。

カタカタカタ・・・

画面に現在状況が映し出され、指揮官用の命令書もプリントアウトされる。

「う〜〜ん・・・厳しいなぁ・・・」

データを見ながらコウが呟く

「そうなのか?コウ。」

ヨシオの問いに振り向かずに答えるコウ、

「戦力不足は否めないな・・」
「・・・」
「編成を少し変更しよう、」

モニターのデータを一通り見た後、
ブリーフィングルームに揃った面々の前で、コウは切り出した、

「A小隊は、俺と、シオリ、サキの3人、」

「解ったわ、」
「うん、解った。」

「B小隊、カツマ、ユウコ、ユカリ。」
「C小隊、ケイ、ナオミ、パット、カオリ。」
「D小隊、ジュン、マホ、ミホ、ミハル。」
「E小隊、ヨシオ、コウジ、ジュンイチロウ、ヒカル、コトコ。」

読み上げられる編成に各自が頷いてゆく

「直援はヨシオに頼む、」
「了解だ、コウ。」
「そして、ヘスペロスの直援に、133戦隊のクマノが合流する予定なので
そこのMSも指揮下に入る。」
「何機だ?」
カツマが聞いてくる、味方は多い方が良いのだ。

「残念ながら、3機だ、」
「少ないな・・・」
「戦闘で消耗したみたいだからな。」
「発艦したあと、パブリク改造の揚陸艇に小隊ごとに接続、ビーム攪乱膜の内側に突入するから、注意だ。」

シオリが続ける

「ビームが無効なのは向こうも一緒だから、多分ミサイルで対抗してくると思うの、
誘導は出来ないはずだから、当たらなければ大丈夫ね。」

各自の顔には緊張が走り、目はだんだんと真剣になっていた。

「では、20分後にコックピットで待機だ、食事なり、シャワーなりして来たらいいよ。」

途中で言葉遣いを変え、学生の頃に使っていた言い方で声をかける。

「生き残るのが優先だ。」
「戦力が厳しいのはジオンも一緒だと思うの。」

皆に顔には笑みが戻り、各自行動を開始した。



「準備はいいかしら?」

レジェンドベルが沈んだあと、カスミ・アソウ少佐は
第11駆逐隊所属フユヅキ級護衛駆逐艦「モエギノ」の艦長に就任
まだ訓練途上の新兵を指揮する事となった、11駆逐隊はヘスペロスの護衛が任務となり、
カスミの着任でモエギノが旗艦となる。

「ハ、ハイ!」

まだ危なっかしさの残る操舵担当のウェーブ、ユキコ・マキハラ曹長が答える。

「艦長、ヘスペロスは機関部の修理が遅れているそうです。」

通信オペレータのエミ・タチバナ曹長がカスミに伝える

「解ったわ、リカ曹長、エンジンはアイドリングで待機。」
「了解。エンジンアイドリングモード。」

モエギノは自動化のテストを兼ねて改装され、ブリッジに居る7人だけで操艦、攻撃が可能な様になっている、
故に非力な少女兵ばかりがクルーとして配置されていた、
(機関室には、それなりに技術を持つ兵が乗船してはいるが・・・)
その機関調整席にいるリカ・カワイ曹長が答える。




「修理終了、工作艦離れます。」

接続チューブの切り離しを確認をしつつ、ミノリが報告の声を出す

「よしわかった、第二種礼文で通信を送っておけっ、」

それを聞いてアカギはスズネに命令する

「了解。」
「増援の状況は?」
「あと、一個戦隊の合流で集結完了です、旗艦よりの戦闘陣形A−30、00に移動の指示がきました!」

アカギはそれを聞いてタムラに指示を出す

「よし!艦を移動させろ!!」
「了解!」
「メインエンジン出力80%、上昇中!」
「リニアカタパルトに火を入れろ!」
「了解!」
「主砲、弾頭七九式対空炸裂弾、装填!」

姿勢制御用のバーニアを上手く使い、位置を固定するヘスペリス
射撃前のテストで砲身を上下に動かす主砲、
ジークランス級宇宙駆逐艦とモエギノが周辺を護衛に囲む。

「時間合わせっ、3・・2・・1・・作戦スタート!!」

通信のオペレーションは現在二人、
大混乱の状況から、情報収集と、戦隊内の通信と担当を分けたのだ、
そこで頑張るスズネにアカギは声をかける。

「あ・・・スズネ。」
「はい、艦長。」
「すまんがこのディスクをコウに届けて来てくれないか?渡すのを忘れた・・・」
「えっ?・・・・あ、はいっ、」
「慌てないでいいからな。」

ブリッジを出たスズネに慌てるななんて、大切なディスクじゃないのかな?
などと、スズネは疑問に思いながらも、エレベータに消えた。

「お優しい事・・・」

キャプテンシートの反対に設けられた司令用のシートに座り、
レイ・イジュウインはジト目でしかし優しくアカギを見つめた。
アカギの意図はバレバレだった。


ノーマルスーツルーム、きらめきのみんなと写っている写真をポケットにしまい込むコウ、
出ようよ顔を上げると、そこにはシオリ、サキ、スズネが立っていた。

「どうした?」

無言の3人、写真を見つめるコウに何か感じたのだろうか・・・

「もう出撃だよ、デッキに行くんだ、スズネも早くブリッジに戻らないとレイに怒られるよ。」

わざと普通に応対するコウ、
3人はそんなコウにしがみつきコウの瞳を見つめた。




艦内に警報が鳴り響き、食堂などの生活業務担当の人間も、仮設され増備された銃座に駆け込む。
カタパルトから、攻撃担当のモビルスーツが次々と発艦して行く。
クマノからも、同じ配色の青とピンクのジムコマンドが発進してゆく。

「MS隊、揚陸艇に合流!」

コウから通信が入る。

「主砲、メガ粒子砲、照準は任せる!味方に当たらなければいい!!」
「了解!」

パブリク突撃艇が先行して加速に入り、その後を追う様に、MSが3〜4機掴まっている揚陸艇が続く
そのパブリクの道を空ける様に砲弾とビームがア・バオア・クーに降り注ぐ。
そしてア・バオア・クーからも、ビームとミサイルの雨が降り注ぐ。

「ソロモンとは比較にならないほどミサイルが来るね、コウ・・」

パブリクに向かい飛んで来る、ミサイルとビームにシオリは不安を隠す様にコウに声を掛ける
ソロモンの時は、ソーラシステムによって出来た死角から進行した事もあって、
シオリは、ミサイルのシャワーは経験していなかった・・・

「(不味いな、ビーム攪乱膜が予定の1/3以下だ・・・)」

コウはモニターを見据え、戦況を読んでいた。




ジオン突撃機動軍所属、ディマンシュ級ディマンシュ・・・

「チャイカ、出撃はいいかしら?」

艦長のオリビアが待機室のチャイカに声を掛ける、

「そうね、私のザクも強化して貰ったし、今度こそあのガンダムを落とすわ。」

ノーマルスーツのチェックを終えて、本から目を離さないで答えるチャイカ

「頼もしいわ、じゃ、10分後に出撃してくれる?」
「ア・バオア・クーに行くんじゃないの?」

そこではじめてチャイカは顔を上げてオリビアを見る

「挟撃よ、連邦の艦隊に一撃離脱、そのままア・バオア・クーで補給を受けて防衛戦ね。」
「・・・ハードね・・・」

栞を本に挟み、ロッカーに入れるとチャイカは立ち上がりMSデッキへと流れて行った。

「続きを読みたいから、帰って来るし、沈まないでよ、オリビア艦長!」
「当たり前じゃないっ、」

チャイカはコックピットに座ると、一人呟いた・・

「ほんと、ここはもう私の家だからね・・・」



艦隊戦が始まった・・
両軍ともにありったけの兵器で攻撃を開始
ビーム攪乱膜により、ミサイルが嵐と降り注ぐ




ラグナ・ヴァルキュリアのブリッジ・・・

「メイ・・・システムは稼働出来る様にはしてある・・・が出来れば使って欲しく無いな・・・」

ノーマルスーツを着た二人は軽い抱擁をしながら言葉を交わす

「ん・・・ナオト・・・」
「じゃ、行って来る。」

軽くキスを交わして、ナオト・タカミ大尉はブリッジを後にする。

「・・・いってらっしゃい・・・・なのだ・・・」


待機していた2人の部下がナオトに続く

「なぁ、ミサカ、俺達も出撃のキスしようぜ。」
「嫌。」
「え?」
「嫌、お断り・・・もっと言ってほしい?」
「つれないなぁ・・・。」

後ろから聞こえるふたりのいつものやり取りに、つい顔が笑うナオトだった。




ケイ・ツキムラはまだリリーマルレーンに居た・・・

「一人で守ってくれたって言うから、どんなパイロットかと思えば、こんなボウヤだったとはねぇ・・・」
「す、すいません・・・」
「(シーマ様は年下趣味もあったのか・・・)」

頬を撫でられ翻弄するケイを眺めて、コッセルは苦笑していた。




戦端が開始されて10分後、すでに猛攻撃の中、艦艇は1/4が沈んでいる。
そんな中から、モビルスーツが両軍から出撃していった。
コウ達は先行したものの、
空母ドロスやその周辺のモビルアーマーに行く手を遮られていた。
モビルスーツの敵では無いとは言え、空間戦闘機ガトルの団体を吐き出し続けるドロスは
的であり、巨大な壁だった、
そんな状況で奮戦するコウ達だが、転記が訪れる。
Sフィールドの空母ドロワが沈んだのだ、
その穴埋めに大きくMSの移動があり、
その隙を突いて連邦のMSがア・バオア・クーに取り付き始めたのだ。
この時点でギレンはキシリアに射殺されていた。
コウ達も、橋頭堡の確保に、と次々に対空砲座やドックを潰して、
友軍の援護をする。

「ん・・・・」

コウになにかインスピレーションが湧いた、「来る・・・」
機体を翻し、プレッシャーのある方向にガンダムを向かわせた。

「ケイっ!後の指揮はまかせたっ!!」

「どうしたの?コウっ」
「コウくん?」

慌ててシオリとサキも後を追う。

3機の行動にナオミがケイの機体に接触した。

「どうするの?ケイ。」
「しょうがないな、状況は混戦しているから、各小隊ごとに分散しよう。
予定だとヘスペリスも接舷してくるはずだから、集合はそこだ。」

各個散開したあと、ケイはケイで、コウが向かった方向とは逆に向かって行った。



「あの機体はあのガンダムの仲間・・・・」

ケイのガンダムを見つけたチャイカは、周辺のジムを無視してスロットルを吹かせた。




「整備ありがとうございます。」

リリーマルレーンのMSデッキ、ようやくシーマから開放されたツキムラは、
ノーマルスーツを着込んで自らのモビルスーツに向かい、整備兵に挨拶をした。

「な〜に、シーマ様の命令だけでなく、おめえみたいな純なヤツは好きだからな、頑張って来い!」
「はいっ」
「おや?坊主、搭乗前のチェックはしないのか?」
「はいっ、みなさんを信じてますからっ」
「そんな事言わねえで見てってくれや。」
「は、はぁ・・・・」

ケイは言われるままに機体の周囲を廻った。

「あれ?・・・」
「どうだ、坊主、パーツの交換ついでに強化してやったぜぃ。」

ケイのゲルググ・マリーネは脹ら脛が被弾していたのだが、
なんとシーマ機の予備部品で修理されていたのだ。
頭部バルカンの有無以外に、シーマのFs型と同型になったと言える。

「坊主の機体データを見たらな、こっちの方がもっと使いやすくなるぜ。」
「いいのですか?」
「良いって事よ、さ、行け。」
「はいっ」

ツキムラがゲルググにビームマシンガンを持たせてハッチに向かおうとしたとき、
管制官が声をかけた。

「坊主、シーマ様がコレを持って行けってよ。」

キャリアーで運ばれて来たのは、シーマのゲルググが使うビームライフルと同型だが、
大きく、さらに長いものだった。

「これは?」
「ロングライフルだ、モード選択で、マシンガンも、高出力ビームの両方が使える。」
「いいんですか?」
「長すぎてシーマ様は使いづらいとよっ、その分威力は十分あるから持ってけ。」

ツキムラはビームマシンガンを腰にマウントして、ロングライフルを掴んだ。

「ありがとうございます、使わせてもらいます。」

ツキムラはキリアキの居る空域に向けて発進した。
その姿をノーマルスーツを着込んだシーマが見送る。

「シーマ様・・・」
「ボウヤもマハル出身だってさ、終わったらみんな一緒に帰りましょうだとよ・・・」
「頼もしいボウヤですな、シーマ様。」
「あぁ・・・ああいう子が居ると、アタシらの行為も少しは報われるってもんさね。」
「そうですな・・・さ、シーマ様。」
「うむ、・・・・・野郎共!!出撃だっ!!!!」

シーマ艦隊からも、全機発進し、戦場へ向かって行った、




「ツキムラ少尉機、リリーマルレーンで修理を終えて発艦してきました。」

キリアキのブリッジにエミリ少尉の嬉しそうな声が響く、
ツキムラの相棒のミヤウチは、それを待っていましたと言わんばかりに、
MSデッキに躍り出て、ゲルググを発進させた。。

「ケイ・ツキムラ少尉、ただいま復帰します。」
「何やってたのよっ、ケイっ、あたし心配してたんだからねっ、」
「修理が大がかりになっただけさ、それよりエミリ、デート忘れるなよ?」
「わっ・・わかったわよ、そのまま出撃、OK?」

ボンッと真っ赤になりながらエミリは応答した。
MSデッキに着艦したゲルググに整備員が取り付いて燃料などをチェックし、補給を開始する。
エミリはパイロット用のノーマルスーツに着替えて、待機ボックスでツキムラを待って居た。

「あれ?エミリ・・・」
「えへへ・・・わたしも予備パイロットだからね、」
「そ、そうなの?」
「よろしくね、ツキムラ中尉。」
「へ?」
「3人とも少尉だから戦時階級だって、ケイ。」
「機体は?」
「予備のゲルググ・マリーネよ、キャノンパックを付けて貰っちゃった、てへっ」
「そうか・・・じゃ行くかっ・・・ん?」

デッキに向かおうとするツキムラの袖を掴んで、エミリは何か期待する目をツキムラに向ける。

「そうだね・・・・」

軽いキス、そして深いキス・・・・

揃って発進してきた二人は、ミヤウチに追いかけられる様に戦場に向かった。



バシュゥゥゥゥ・・・・

一機のゲルググをビームサーベルで一刀両断したコウは、
その爆発の光の向こうにナオト・タカミのMS−18Gラピスラズリを発見した。

「あいつか・・・」

リックドムを撃破したシオリとサキが追いついた。

「あの機体は・・・」
「サキ、知ってるのか?」
「メイちゃんの所のモビルスーツよね・・・確か・・・」

コウの機体はもうビームライフルのエネルギーが無い、
ビームサーベルの出力を最大にするや、シールドを構えて突進した。

「ほう・・・さすがメイの姉上の配下だ・・・相手にとって不足は無いっ!
ミサカとキタガワは、後方の2機を牽制して援護だっ」

ナオトも、ビームマシンガンを捨て、ビームサーベルでコウを迎え撃つ。

ギュインッ

ビームが干渉で弾け合い、二人は幾度もぶつかって行く。

「やるなっ、」
「貴様こそっ、」


シオリは右のドム・フュンフにライフルを撃つと同時に左のドム・フュンフにサーベルで斬りつける。
背後を取ろうと右のドムが廻ろうとする所にサキのビームが飛ぶ。

「ミサカっ、」
「アナタはあのキャノンをっ!」

シオリのサーベルを寸前で避けてミサカはヒート剣で突く、

ズギュンッ・・・ジジジジ・・・・

シオリはわざとそれをシールドで受け、バルカンでカメラを狙った。

ドゥルゥゥゥゥゥゥ・・・・

頭一つ下げてバルカンを避ける
すくい上げる様にバズーカをコックピットに向けようとするが、
手首を回転させたシオリにビームサーベルで右腕ごと切られてしまった。

「やったわね、」

ミサカも、シールドに刺さったままのヒート剣を真上に切り上げて、
左肩の関節を融解させ動作不能に持ち込んだ。


「不味いな・・・」

サキが放つビームのシャワーに接近する事が叶わないキタガワは、
ミサカの機体の戦闘能力が皆無に近いと知るや、機体をひるがえし、
救出に向かった、
ミサカもそれをみて、胸部のビームスポットガンを発射し、シオリとの距離を開ける。


コウとナオトは何十回と切り結ぶものの、お互いに有効打が得られない、
ガンダムの隠し兵器のガトリングやビームスポットガンですら、
瞬間最大推力に勝るラピスラズリに避けられてしまうのだ、
逆にナオトが斬りつけても、その反応速度にさらりとかわされてしまうのだった。

6人の戦闘の終焉は、数機のミサイル状の物体の乱入で終わる。

「なっ・・・」
「とんがり帽子の付録??」

それの動きはエルメスのビットとほぼ同じ行動をするのであった。

「メイかっ、システムを使ったのか!!」

このビットはラグナ・ヴァルキュリアに搭載され、メイがシステムに入ると可動するサイコミュであった、
システムの使用によって、ラグナ・ヴァルキュリアは巡洋艦ではなく、
モビルアーマーへと変貌する、システムは無理矢理に能力を被験者から絞り出す事もあり、
精神だけでなく、生命すら危険に落とすのだ。

「ミサカ、動けるな?艦に戻るぞ、付いて来い!」
「りょ・・了解・・」
「キタガワは後方援護、そのまま艦の援護に付け!」
「了解」

ビットの攻撃に翻弄されつつも、コウは被弾しながらもビームサーベルで2機撃墜していた。

「やれるかな?・・・えぇいっ、根性!」

有効な攻撃手段を失ったコウとシオリを庇い、サキはビームを拡散モードにし、
エネルギーが尽きるまで連射する事によって、6機のビットを葬り去った。

サキが一息入れると、ナオト達はラグナ・ヴァルキュリアに戻る為に離脱していた。

「仕方無い・・・一端戻って補給だな・・・」
「「了解」」




タタタタタタタタタタタタタタタタタタ

「この赤いザクは見覚えがあるっ!」

銃弾の雨をまき散らし襲いかかってきたMS−06RZのの部隊、
その隊長機「赤い妖精」のふたつ名を持つ、チャイカ中尉の機体を見て。
ケイは叫んで、ナオミとパトリシア、カオリを展開させる。




「二時の方向から、ガトルの編隊多数接近!」
「対空砲火!弾幕薄いぞっ!」

ア・バオア・クーに接近しているヘスペロスは、対艦砲座などの猛威にさらされ、
さらにインターセプターの標的にもなっていた。

ズン・・・

ブリッジの上部にヨシオのジムスナイパーが乗る。

「ブリッジ、最大出力モードで狙撃する、冷却パイプのハッチを・・・」

開いたハッチからパイプをビームライフルに接続、

「へへ、見事な爆撃体勢で来やがるぜ・・・」

ガトルが一直線に並んだ瞬間、ヨシオはトリガーを引いた。

「A小隊帰艦、ガンダムNT、ガンキャノンアサルトは補給、ガンダムは損傷度C、第一デッキへっ!」
「了解、第一、第二ハッチを開けてくれっ」

コウと、サキは前方の第一ハッチより着艦、冷却に整備員が2機に取り付く、
シオリは側舷の第二ハッチから入るが、重量がかかったとたんにガンダムの右膝が崩壊し、床に崩れ落ちた。

「しまった・・・・」

その振動はブリッジにも響き、スズネはシートから滑り落ちた

「ガンダム、大破、再出撃不能!」
「予備の機体は?」
「少佐の乗っていたジムが残っています」

レイは、モニターにMSデッキを出した。

「シオリ、」
「はい・・・」
「第二デッキにコウのジムが残ってる、済まないがそれで再度出撃を頼めるか?」
「・・了解しました・・・」
「NTとアサルトの補給は5分で終わらせろっ、

ガンダムNTから降りて来たコウがシオリの側に来て、サキも合流して待機ボックスに入る。

「大丈夫?シオリ・・・」
「・・・・
壊れちゃった・・・・」

そうシオリが呟いた時、後ろから声が掛かった。

「そうだな、見事に関節がイカレちまった・・・が、安心しろや、30分で交換してやる。」
「え・・・・」
「イザと言うときに備えて予備の部品で一機組んでいた所だ、足を丸ごと交換で済む。」

右舷デッキ主任のミシュラン曹長だった、

「お願いします・・・」
「それまではジムで艦を守ってくれよなっ」

そう言ってミシュランはシオリのガンダムへ流れていった。





通常の着艦よりも、ナオトは素早く着艦すると、機体をメカニックに任せてブリッジへ急いだ。
その後方、ミサカが見事な操作で着艦していた。

「ナオト様・・・」
「メイはまだシステムか?」
「はい・・・まだ出ていらっしゃいません・・・」

ナオトがパスワードを使ってシステムルームを開くと
そこにはぐったりとしたメイが意識を失っていた。
ナオトは、配線の繋がったヘルメットを外して放り投げて、メイを抱え上げた。

「う・・・・ぁ・・・・・」

かすかに呻くメイ。

「安心しろ、今メディカルルームに連れて行くからなっ、」

メイを寝かせたナオトは護衛しているキタガワに命令した、

「ラグナ・ヴァルキュリアは戦場から撤退する、今教えた場所をヒートサーベルで貫け!」
「了解」

キタガワはシステムのあるブロックを正確に貫き、システムを鉄屑と変えた。




「左舷メガ粒子砲に直撃!」

悲痛なメグミの声がアカギの上で響く、

「右舷をア・バオア・クーに向けるんだ、直援は?」
「かなり損傷が見られますが健在です!」

ススネの解答にホッとする間もなく、再びメグミの悲痛な声が聞こえる

「ムサイ一隻が突撃してきます!!」
「回避!急げ!!」
「体当たりしてきます!間に合いません!!!」

接近するムサイに対して、コウジは残りのエネルギー全てを投入してビームライフルを放つ。
間一髪で撃沈したものの・・・・

「右舷デッキ、大破!」

あまりに近い爆発は、セスペロスの右舷デッキの半分をもぎり取ったのだ、
右舷デッキの前半分が失われたのは、ブリッジからもはっきりと見えた。

「・・・・こ・・ちら・・・右舷デッキ・・・・」

血を流すミシュランがモニターに写った。

「嬢ちゃん・・のガンダ・・ムは直した・・・取りにこさせて・・・く・・・れ・・・・」

そう言って、ミシュランは崩れ落ちた・・・・・

「おい!ミシュラン!しっかりしろ!!」

そのモニターにユイナが現れた。

「艦長・・・気密デッキにいた私達以下4名を除いて、開放デッキにいたメカニックは全滅しました・・・・」
「そうか・・・」
「曹長も、ガンダムを組んだあと、武器を用意しに開放デッキに・・・・」
「わかった・・・・・間もなくシオリが戻る、」
「了解・・・」

モニターが消えて、振り払う様にアカギは指示を出す。

「ヘスペリス、揚陸準備!陸戦隊!出番だっ、!」
「D小隊、補給に帰艦します!」
「先に直援を補給させろ、ヨシオとジュンイチロウ!戻れ!!」
「了解!」
「B小隊も戻ります。C小隊・・・・反応が二つしかありません・・・・」
「誰が残ってる?」
「シジョウ大尉と、パトリシア少尉の2機です・・・・」
「おいおい・・・パイロットは無事だぜ?」

通信が届いたのか、スピーカーからケイの声が聞こえた。

「予備の機体は残っているか?カオリは負傷しているが、ナオミは大丈夫だ。」
「カオリを先に収容だ、ナオミはシオリが戻るまで待て。」
「了解」

ア・バオア・クーに着底し陸戦隊が侵入する中、戻って来たモビルスーツがヘスペリスを守る様に展開する。
その上方には、クマノとモエギノが防衛の弾幕を張っていた。

「MS上陸部隊全て上陸完了しました、ア・バオア・クーの傘の柄のドックはすべて占領です。」
「ようしっ、A、B、D、Eは残敵掃討、C小隊と133小隊は直援だ。」
「了解、」

ア・バオア・クーからの降伏信号はその直後だった・・・・・












「大佐、前方に救難信号を発する友軍機がありますが・・・・」
「回収できるか?ハスラー艦長。」
「当然です。」

ア・バオア・クーから脱出する艦のブリッジ、
額に包帯を巻いた大佐は、出来うるだけの救助に、まだ可動状態にあるモビルスーツを出動させていた。





「まいったわね・・・モニターは死んでるし、脱出装置も動かないわ・・・・」

大破し、浮游するチャイカのザクに、片腕のドムが接近する。





戦乱はまだ終わらない・・・・・