第三艦隊との合流予定のL1、サイド4の残骸が浮かぶこの空域で、まさかのジオン軍との接触に第一機動艦隊は騒然となっていた。


「敵艦隊総数6、ザンジバル級1、ディマンシュ級3、ムサイ級パトロール型2」
「573戦隊は発進して待機、10戦隊とタイホウのMS隊で迎撃するんだ。」
「艦長、敵MS確認!総数32?」

数えたオペレーターがその数に息を飲んだ。

「32機だと?ダミーではないのか?」

バクレツザン大佐が聞き直す

「熱源スキャンでも32機です、データに此の熱量はありません、新型と思われます。」
「タイホウの全MS発進!!援護射撃開始しろ!!」
「まずいな・・・」
「司令・・・」
「おそらくゲルググとか言う新型だ、・・・573戦隊に防衛ラインを引かせろ」
「了解、通信士、ヘスペロスに回線開け!!」


「連邦の艦よりMSの発進を確認しました。」
「そうか、グズヌフのグラードル大尉に連絡、ディマンシュと共に敵の側面を攻撃せよ!」
「MS隊、連邦のMSと接触!交戦に入ります!」

ジオンの艦隊が二手に別れ、ザクやドムを搭載したディマンシュと前線の補給艦となる為ディマンシュ級グズヌフは、艦隊の側面に攻撃をしかけた。
ザクといってもエース部隊の一環のMS−06RZと06FZRである、そのサポートには06KRである。

「チャイカ中尉、健闘を、」
「いつも通りよ、」

ゲルググのパイロットは本国と突撃機動軍、地球攻撃軍よりの生え抜きで構成されている。
宇宙攻撃軍のエースパイロットは状況が許さず召集出来ておらず、機体を輸送中であるが・・・

「連邦のMS、たしかジムとか言ったな・・・フ、恐れるに足らん。」
「ライデン少佐!」
「ようし、まずビームのシャワーを浴びせてやれ!」
「了解!!」
「ケイ・ツキムラ少尉、貴様は私に連いてくればいい!」

この中で唯一の新人パイロットであるケイ・ツキムラは士官学校を繰り上げで卒業したばかりのまだ少年といっていい年齢だが
訓練においてTOPの成績を収め、YMS−14Fに最初から乗っているので操縦だけは他のエースよりもゲルググに慣れていたが
実戦経験が皆無だったので、ジョニー・ライデンに連いて行くのがやっとだった。

「訓練とは違う物だな、こりゃ」

32機のゲルググが放ったビームは不慣れな連邦のMS数機を光に変えた

「烏合の衆が!!!」

誰の言葉か、ジムは次々と撃破されていく
その中には姿勢制御に推進剤を使い果たし行動不能に陥った者もあった。
だが確実にスコアをあげている部隊が二つあった。
マサキ・ゴトウ少佐率いる10戦隊のメンバーと元10戦隊のロボ・オオガミ中尉率いるフラワーハリケーン隊である。
フォーメーションを中心に展開する10戦隊と臨機応変に指示をあたえるFH隊、残念なのは10戦隊の方には戦死者が出ている、

「敵はエースだ、止めろ!573戦隊に全艦をカバー出来るだけの数は無い!!」

マサキの機体はガンダムであるが故に攻撃は集中する、応戦しながらも指示を出すマサキ。

「マサキ少佐!!」
「ハンシュー、来るな!!持ち場に戻れ!!」
「・・・了解・・・」

隙をついたゲルググがマサキのガンダムに迫るが右腕のガトリングガンで粉砕、光球に変える。

「マサキ少佐!合流します。」

FH隊のロボ・オオガミはそう通信すると穴の空いたフォーメーションに部下を配置した。

「残存は我々だけの様です、共同でラインを・・・」

言葉の途中でオオガミはゲルググの両腕を切断、そのまま蹴飛ばした。

「隊長!残弾がもうありません!!」

マリアの声がミノフスキー粒子の雑音の中聞こえる。


「ライデン少佐!!」
「頃合いか・・・全機後退!!」

戦況は大半のMSを撃破された第一機動艦隊が不利だったが、残ったMS隊が難攻不落の集団だった為、
ジオンのジョニーライデン少佐は艦隊への攻撃を諦めて21機残ったゲルググを後退させた。


「敵が撤退していきます、マサキ少佐!」
「こちらも艦隊へ戻る、オオガミ中尉!しんがりを頼む!!」
「了解!!」


グズヌフとディマンシュは本隊と第一機動艦隊と正三角形に位置するポイントにてMS隊を発進させた
MS−06RZ(FZR)4機、06KR3機、09RU3機、14KG1機の11機である。

「グラードル大尉、ディマンシュのオリビア大尉からの入電です。」
「なんでありましょうか?大尉。」
「相変わらずカタイわね、ヴィリィ。」
「そんな事を言うための通信ですか?大尉。」
「フフ、ごめんなさい、私も出撃するので指揮をお願い。」
「又ですか?アナタも・・・まあいいでしょう戦果を期待しております。」
「もう!ホントにカタイんだから・・・」

ディマンシュから発進したのはペズン・ドワッジと呼ばれる試作MSだった。

「ツィマッドの社長も娘には甘い様ですね・・・艦はここに固定、残骸に潜んでMSの戻りを待つ!」
「了解」

対艦攻撃能力が皆無なディマンシュ級は防衛もMSに依存しているので、手元の全MSが発進してしまうと無防御になってしまう。
それでもそこで停止と言うのはかなり自殺行為なのだが・・・


ヘスペロスのMSデッキは準備の完了したMSから順に発進していた。

「ハヤカワ中尉、マニュアルは読んだが俺に使えるか?ニュータイプ用とあるぞ?」
「そんなもんはプレゼンにすぎません、コウ少佐の今までのデータを見る限り十分使いこなせるでしょう。」
「ふぅん」
「あ、信じてませんね?」
「まぁね、そんなに能力があるとは思って無いからね。」
「そんなことないよ、コウはそれだけの力を持っているんだよ!」
「シオリ・・・どうした?」

もうすぐに発進だぞ、の言葉をコウは飲み込み不安そうなシオリを側に引き寄せヘルメットのシールドにくっつけた、
ドアップなコウの顔に顔を真っ赤にするシオリだが、スモークシールドだったのでシオリの反応にコウは気づかなかった。

「今回は戦場の空気を感じるだけでいいんだ、俺の後ろに居ろ、絶対に守ってやるから・・・」
「うん、絶対守ってね、コウ。」
「しかし、いきなり実戦だからな・・・慣熟テストする時間くらいよこせってんだジオンめ。」
「ぼやかないの、フフフ。」

気を利かせたのか、ふとみるとハヤカワ中尉の姿は無く、下の方でメカニックに怒鳴っていた。

「ミケ!!!このボケ!!こんな事も知らんのか!!ちゃんと勉強しとったんか?ミケ!!!これはメカマンなら常識やで!!!!」
「はぅ〜、すみません!!」
「又かい、ミケは・・・まったく懲りないな・・・」
「グラジャーノン!!!オマエも口より手を動かせろ!!」
「うひゃぁ、ヤブヘビ、ハイィ!!!」
仕事は寡黙に・・・

ボソボソと突っ込むなよキンケルド・・・

「艦長、E方向に艦影をキャッチ、MSらしき熱源12機確認しました。」

アキホが敵の接近をレイに告げる

「誰が向かっている?」
「ジュンとヨシオの小隊です、艦長。」
「・・・コウとシオリは?」
「調整に手間取りまだ発進していません。」

レイは通信機を手に取り、ガンダムのコウを呼び出した

「ヌシビト少佐、どうだ?」
「あぁ、すぐに出られる。」
「E方向より敵MSが接近している。ヨシオとジュンが向かっているが、二人でそっちに合流してくれ。」
「了解」

二人のMSがカタパルトに乗り、カウントがはじまった。

「しっかり俺についてこいよ!シオリ!!」
「ハイ!!(この言葉、愛の言葉としてコウから聞きたいな・・・)」

シオリの妄想を砕く様にカタパルトがうごいた。

「きゃん!!訓練よりもGがキツイ・・・」

「大丈夫か?」

機体を安定させたコウはシオリの機体と接触回線を開いた
ありすぎるパワーにコウはかなり苦労したのだが、シオリの目には自在に操っている様に見えた。

「(・・・コウってホントに凄い)あ・・・うん、大丈夫だよ!」
「そうか?なんか悲鳴が聞こえた様な気がしたが・・・」
「もう・・・イジワル・・・」

スパーン
「いたたたたた、痛いですよ中尉、」
「やかましい!!おんどりゃあなぜこんな事も知らんのや!どついたろか?」
「もうどついてます・・・」
スパーン!!
「つべこべ言うな!!」
「うぐぅ・・・」
「なあ、キンケルド、中尉のハリセン、どっから持って来たんだ?」
「フジサキ大尉が貸してくれたらしいぞ、グラ。」

メカニックの控え室、哀れミケの回りには機械整備の初歩の本が積み上がっている、一体何回はたかれているのだろうか・・・
ハリセンを振るうハヤカワ中尉も段々と力がこもっている、そこへ・・・

「何をしてるの?」
「あ、ヒモオ中尉。」
「いや、この整備をろくすっぽ知らんと整備をしようとするアホを修正してますねん。」
「中尉、訛ってる訛ってる・・・」
「ぐ・・・」
スパーン!!!
「あぅ・・・」
「グラ・・・口は災いの元って言葉知ってるか?」
「あぅぅ・・・すいません・・・」
「で?彼をどうしようって言うの?良かったら私が・・・」
「「「「私が?」」」」
「脳改造しましょうか?」
がびーん!!!
「ややややややや、やだ!だだだだだだだだ、だめ!!」
「良かったなミケ。」
「ちゅうい〜」
「しっかりと整備のデータをインプットしてこい」
「グラジャーノン!貴様!!」
「僕には何も言えないよ・・・」
「キンケルドぉ・・・」
「・・・・・・冗談よ、そんなこと出来ないわよ、やってみたいけどね。」
「ミケくん、根性でがんばって!!」
「ニジノ少尉・・・ハイ!!頑張ります!!」
「・・・現金なやっちゃ・・・」
スパーン!!!!
「きゅう・・・・・・・」
「あ、沈没した・・・」
「ご冥福を祈っております。」
「死んでない死んでない・・・」
「ニジノ少尉、なんでこんなところに・・・」

サキの来た方にはMSシュミレーターがあったのだがそれに気づいたのはいなかった。


つづく



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