プロローグ



地球の周りには数百基の巨大なスペースコロニーが浮かび、人々がその内壁を第二の故郷として半世紀
人類の半数が宇宙生活者となった、宇宙世紀0079・・・・・・・
サイド3がジオン公国を名乗り連邦政府に独立戦争を挑んできた、大戦当初に総人口の半数は死に自らの行為に恐怖した。

ジオンのブリティッシュ作戦により地球規模の災害が起こり、東亜、日本地区にあった連邦軍のニュートーキョーベースは
混乱に乗じて攻撃をしかけてきたジオン軍により壊滅した。

士官学校きらめき校舎の生存者はひびきの校舎の生徒と合流して、ジャブローに逃れる。

地球連邦軍総本部ジャブロー 
南米の天然の地下大空洞を利用して作られた、地球上の軍事施設としては最大級の物である。
その総敷地面積は42平方km。通常45万人もの人員が生活する、ちょっとした市に匹敵するサイズなのだ。
ここには連邦軍最高指令本部が置かれ、さらに軍工廠、宇宙艦艇建造ドックなどがひしめきあっている。
そんな大規模な施設だった。
そんなジャブローの端にいかにも小規模基地ですと言わんばかりな風景な航空基地があった。
その空港に、一機の輸送機と護衛戦闘機が着陸した。

「結構風が強いな・・・・今日は・・・・」

タラップを降りてきた地球連邦軍中尉、コウ・ヌシビトは呟く。
連邦軍の量産型モビルスーツ、RGM−79 ジムの実戦テストでオデッサ作戦に参加していたコウは、
参謀本部に呼ばれて、ジャブローに戻って来たのだった。

「少しは休暇を頂けるのですか?先輩。」

同じくタラップを降りてきたウェーブの女性、
見た目はまだ高校生で通るくらいに童顔だが、24歳の准尉
スズネ・ミサキが風にあおられる髪を押さえながら聞いた。

「無くても奪うさ、」

振り返り、笑顔で答えるコウ。

「そうですよねっ、」

小走りにコウに追いついたスズネは、コウの左腕に腕をからませる、

「お買い物に付き合って下さいねっ、」
「あぁ、そうだね・・・いいよ。」

部隊の仲間もタラップで降りてくる前で、寄り添って建物へ入っていった。

「ふぅ・・・侘びしい独り者にはやってらんないなぁ・・・」
「あはは・・・・やけ酒に付き合ってやるよ、」
「飲み比べだな、アイザワ、負けた方が奢るってヤツで。」
「受けたっ」




3日の休暇を貰った(奪った)コウは3日目に旧友、情報部に勤務するヨシオ・サオトメ少尉と会っていた。
ティーラウンジでコーヒーを飲むコウとヨシオ、コウの隣りには
ストロベリーサンデーをほおばるスズネもいた。

「コウ、きらめき校舎は完全に破壊されたみたいだ・・・」

失った母校の現状、懐かしい場所が失われその象徴だったものを気にかける。

「そうか・・・伝説の樹はどうなったんだろう?」
「流石に情報がはいらないな・・」
「ヨシオでもだめか・・・」

コウ・ヌシビト中尉は士官学校を卒業したあと、TMM専科コースを出て新兵器MSの実働試験を行っていて
士官学校の後輩、スズネ・ミサキ准尉はコウの助手として指揮戦闘車両のオペレーターをしている。
軍務だけでなく、私的に行動する時にもスズネはコウの側にいる。
本人達は否定しているが、端からみれば恋人の様な二人だった。

「イジュウインが何かやらかしたみたいだぜ、」
「ふぅん?」

あまり気にとめず、いつもの事とコウは軽く返す。

「573戦隊って知ってるか?」
「あぁ、今度新編される部隊だろ?」
「司令はイジュウインだ、」
「そうなのか、」

それがどうした?といった表情でコウはコーヒーカップを口にする。

「そうなのかって、俺達もそこの所属になるんだぜ!」
「ホントなのか?」

辞令の降りていない情報に少し驚きを隠せないでいるコウ。

「あぁ、きらめき校舎とひびきの校舎の出身者だけで編成されるみたいだ。」
「と、言うことは・・・」
「当然、参謀本部のシオリちゃんも所属になる。」
「そうか・・・」

もう半年も会っては居ない、心に住み着く幼なじみを想い笑みをこぼした。
そんなコウを横目で見て少し寂しそうな表情を見せるスズネ。

「うれしそうだな・・・」
「まぁね。」
「ハイハイ・・・」
「で、コウはどこに行くんだい?」
「例のホワイトベースさ、」
「お、俺もつきあうぜ、スズネちゃんも行くの?」
「ハイ!!当然です、ヨシオ先輩!」

会話内容に参加せず、ストロベリーサンデーを美味しく食べたスズネはこれ以上は無い笑顔で答えた。
今コウに一番近いのは自分だとの意図を見せる様に。




ジャブロー最大の宇宙船ドック、A−1号ドックには素人だけで、戦火をくぐり抜けてきた
ペガサス級強襲揚陸艦ホワイトベースがその体を休めていた・・・

「こりゃあすごいな・・・」
「実戦をくぐった歴戦の艦だからな・・・」
「コラ!貴様!!そこでなにをやっている!!」
「ウ、ウッディ大尉・・・」
「ん?コウ・ヌシビト中尉じゃないか、ははぁガンダムを見に来たな?」
「はは・・・そんなとこです。」
「残念だがダメだ、それよりBブロック1号ドックを見てこい、貴様らの乗るヘスペロスが到着しているぞ。」
「本当でありますか?大尉。」
「あぁ、昨日まで俺が点検の指揮をしていたんだ、嘘を言ってどうする?」
「わかりました、見てきます」
「お、おい!ヨシオ・・・」

どうにかガンダムを、と思っていたコウをヨシオは引きずるようにその場をはなれた。

「おまえ、夕べのジオンの侵入があった様にスクランブルがかかったらガンダムに乗ってしまおうと考えていただろ。」
「まぁね、ま、アレの起動をしたのは俺だぜ?どれだけ成長したのか確認もしたかったからな。」
「フフ、先輩らしいです。」
「さあ、我が家となる艦を見にいきますか、」
「そうだな・・・・?」

どこからか大きな爆発の音がすると、サイレンが鳴り響く

「何っ?」

とっさにコウは通りすがりのエレカを止めた。

「貴様達、そのエレカを貸してくれ、」
「ハ!中尉殿、今の爆発と何か関係があるのでしょうか?」
「今の爆発はMS工場の方角だ、様子を見に行く!」
「了解であります!あの、自分達も同行してもよろしいでしょうか?」

コウは二人を見た、どうやら士官学校の生徒らしい、しかもTMM専科のワッペンを着けている。

「よし、貴様ら名前は?」
「ショール・ハーバイン軍曹であります。」
「カリスト・マノメノン軍曹であります。」
「ほう、出身は?」
「キャリホルニアです。」
「チェコです。」
「そうか・・・」

キャリホルニアはジオンに占領されジオン地球攻撃軍の拠点となり。
チェコはオデッサにジオンが侵攻した際に壊滅している、つまり二人も母校を失っているのだ、

「俺とコイツの母校もジオンに潰されている、君達の気持ちは解るよ。」
「口が軽いなぁヨシオは・・・」
「おっと、俺の名を言ってなかったな。コウ・ヌシビトだ。」
「ヨシオ・サオトメだ、女の子の情報ならまかしとけ。」

ガスッ!

「うぐぅ・・・」
「二人とも、気にするな。」
「あの、中尉殿はあのコウ・ヌシビト中尉なのですか?」
「お、おいやめろよカリスト・・・」
「このジャブローではコウ・ヌシビトというのは先輩だけです。」

誇らしげに横からスズネが答えた。

「ちゅ中尉は我々TMM専科のあこがれです、・・・」
「さて、おしゃべりはここまでだ、着いたぞ」

MS工場は休息していた作業員があわただしく駆け回り、コウはそのうちの一人を捕まえた。

「どうなっている?!!」
「ジオンに爆弾を仕掛けられましたがホワイトベースのアムロ・レイ少尉に除去していただき、今は点検をしています。」
「解った、行っていいぞ。ヨシオ、ヘスペロスと連絡できるか?」
「繰艦メンバーはもう乗船しているハズだ、おい!ここの通信機借りるぞ!」
「空襲の警報まで鳴りやがる、くそぅ情報が欲しい・・・」

ヨシオは慣れた手つきで艦への直通回線をひらいた。

「出たぞ、コウ」
「OK」
「はい、こちらヘスペリス・・・コ、コウくん?」
「サキちゃんか、ひさしぶり・・・じゃなくって、ニジノ少尉、ジャブローに潜入した工作員と空襲の情報を回してくれ。」
「・・・了解です、ヌシビト大尉。」

コウとサキは高校の頃に使っていた”またあとで”の合図をかわすと軍人の顔になった。

「工作員はドックで交戦中、空襲はジオンのMS約30が降下しました。」
「お・・おい、コウ?どうする?」
「そこのメカニック!!ジムは出撃できるな?」
「ただいま起動中です。」

そこに、他のパイロット達がエレカで駆けつけて来た
エレカから飛び降りたケイ・シジョウ中尉がコウに声をかける。

「さすがに速いな、コウ。」
「行けるな?」
「当たり前だろ?」
「とても大怪我で後方送りになったヤツの言葉じゃ無いな。
「言ってろっ、」

コウ達は各々そばのMSに走った、

「中尉!自分達も出撃します!!」
「そうだな、よし!!連いて来い!!」
「ハイ!!」

慌ただしく準備するコウを、スズネは不安げに見つめる。

「心配するな、大丈夫だよ、スズネちゃん!・・・そうだな、天使の祝福でも貰おうかな?」
「えっ?」

言うがやな、コウはスズネの唇を奪うとそのままMSのタラップを駆け上っていった。

「もう!!センパイったら!!」

真っ赤になり叫ぶスズネだが、表情は嬉しそうだった

「コウ、シオリちゃんに言いつけるぞ?」
「そう言うことを言うか〜?ヨシオ、・・・後ろからの攻撃に注意しろよ・・・」
「ジョ〜ダンだってば、(笑)」

コウは慣れた手つきでジムをチェックして動かした。

「これがB型量産タイプか・・・先行機より非力だな、オデッサでのトラブルが直っていれば良いが
・・・出力から言ってビームライフルはどうにか使えるな。」

コウはジムの手にガンダムと同タイプのビームライフルと100ミリマシンガンを持たせ、外に出た。
ケイはマシンガンを装備、ヨシオとショール、カリストはビームライフルを装備していた。
スズネは指揮車両に乗り込みインカムを取った。
遅れて参上したカツマ・セリザワ少尉は指揮車両のコックピットに座る。

「行くぞ!!この部隊は俺が預かるっ!!」」
「「「了解!!!!」」」
「ヘスペロス!本部は混乱しているので情報を頼む!」
「了解です、大尉、」

サキはコウを先ほども「大尉」と呼んだ。

「俺はまだ中尉だぜ?」
「まだ辞令を受け取ってないのですね?わかりました、中尉」
「敵の目標は、解るか?」
「Aブロックの第一宇宙ドックと思われます。」
「ホワイトベースか・・・」
「敵さんの評価はかなり高そうだな、コウ。」
「Aブロックへ行くぞ」

コウは一人で行動しようとする一機のRGM−79X−eG ジム・エッグに声をかけた

「貴様の官姓名は?」
「ユウイチ・アイザワ少尉です。」
「なんだ貴様か・・・俺達に付いて来い、ジムは単独戦に向かない。」
「了解です、しかしなんだは酷いじゃないですか、先輩。」
「そうか?」
「そうですよ。」

TMM専科での二年後輩のユーイチ・アイザワ少尉はコウに散々シゴかれたパイロットの一人であり
オデッサでのRGM−79Aの実働試験部隊のメンバーでもあった。
6機のジムと一台の指揮車両は展開しながらAブロックへ急いだ、

「中尉!右に敵です!!」

開けた場所に出るとホバートラックのスズネから通信が入った。
スズネの声にコウが確認すると
そこには脱出しようとしている3機のジオンMSが1機の白いMSに追われていた

「赤いMS?」
「中尉、行きます!!」
「ま、待てカリスト!!」

赤いMSの前に出たカリストはビームを連射して近づいたが素早い動きでコックピットを貫かれた。

「は、速い・・・うわぁ!!!!!!!!!」
「カリスト!!!」
「ショール!出るな!!」

コウはシールドでショールの動きを封じる

「しかし・・・」
「離れた位置で狙撃しろ!でないと貴様も死ぬ。」
「・・・了解・・・」

コウはビームでアッガイを撃破するが、赤いMSはガンダムに追われ姿を消していた。

「あれがガンダムか・・・そしておそらくあれが赤い彗星・・・」
「赤い彗星・・・」
「潜水艦隊に所属したって噂は本当だったよ〜だな。」
「カリストは後続にまかせるぞ、俺達は地上の敵を迎撃する。」
「解った、コウ。」

物資搬入用のリフトを使いコウ達5機とホバートラックは地上に出る。

「一番近い敵は?」
「5時の方向です。」

コウが振り向きざまにビームを放つと同時にユーイチもビームを放つ、
そのビームはそこに姿を出したザクとグフに直撃し、光球と変える

「鈍ってはいないみたいだな、ユーイチ。」
「とーぜんですよ、先輩、」
「「そこっ!!」」

二人の放ったビームが一機のズゴックを貫いた。

「はぇ〜、俺達の出番はなさそうだな、ハーバイン。」
「そうですね。」
「喋ってないで貴様らも撃て!」

あっけに取られていた二人にマシンガンでザクを粉砕したケイが叫ぶ。

コウ達以外は初めてMSでの戦闘故に苦戦を強いられた連邦軍のMS部隊だが
コウたちは獅子奮迅の働きでMSを10機は撃墜した、初陣のショールもコウの手助けで1機を撃墜している

「よくやったな、ショール。」
「ありがとうございます。しかし・・・」
「運がなかった、としか言えないな、」
「・・・」
「カリストの為にも生き残れ、」
「ハイ・・・」
「生きていたら酒でも飲もうぜ、」
「はい、サオトメ少尉」
「エースになれたらお茶にでもさそってね、」
「はい。」

ホワイトベースが出港した当日。

「コウ・ヌシビト大尉以下10名、強襲揚陸艦ヘスペロスに配属になりました。乗船許可を。」
「許可します。・・・お久しぶりですね、コウ・ヌシビト」
「おいおい、しおらしいなイジュウイン。」
「あいかわらずだな、庶民!・・・フフフ、この口調の方が良かったかしら?」
「ハハハハ」
「戦闘中でなければ、学校の時と同じでいいですからね、」
「じゃあ、イジュウイン、俺達のねぐらはどこだい?」
「サオトメくんも変わらないわね。」

荷物を持ってエレベータに埜炉込むヨシオを見て、レイは懐かしげに微笑んだ。

一人になってコウは後ろに視線を感じた

「コウ・・・」
「シオリか・・・」
「又、一緒になれたね。」
「そうだね」
「なんか、言葉が出ないね・・・いっぱいいっぱい話したい事があったのに・・・」
「俺もそうだよ、シオリ・・・」

夕刻

「スペースゲートへ移動」
「リニアカタパルト、システムチェック」
「進路クリアー」
「ヘスペロス、メインエンジン始動、各部装甲最終チェック、
「エンジン始動します。機関、赤!
「装甲チェックOK」
「係留フック、オープン」
「ミノフスキークラフト出力全開」
「ヘスペリス浮上」
「カタパルトスタンバイ!」
カタパルト電源入りました、」
「発進位置固定、進路クリアー、」
「メインエンジン点火」
「エンジン点火、ヘスペロス出港します。」
「ヘスペロス、発進!!」

ホワイトベースを追うように573戦隊強襲揚陸艦ヘスペロスは、ジャブローを後にした、その20分後には同僚の
防空巡洋艦レジェンドベルとレジェンドウッドもブースターで宇宙へ出撃した。

コウが宇宙に出てすぐに行ったのは鬼のような空間戦闘の特訓だった。


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